46.温泉街の行く末
    去りゆく者の怨念

午前零時を過ぎて猛然と雪が降り出した。ありがたくない天気予報が的中した。気温は、マイナス3度。街路灯に照らされる世界は、真っ白に変貌していく。朝8時の積雪で40センチ、さらに雪は降り続きチェックアウト出来ないお客様も出てきた。11時、やや小降りには、なったが60センチは越えただろうか。予約客への連絡の結果、キャンセルが数組発生した。代わりに帰れないお客様の宿泊延長もあるが土曜日のこの天気は痛い。さらにこの後、辛い作業が待っている。数年ぶりの大雪にスタッフ全員で除雪作業に当たる。スキー場など雪国なら平常のことなのだろうがそれほどの豪雪地帯ではない私の町では、年に何度しか無いことで体勢がとれてない。町の除雪車は、温泉街には、いつも一番最後にやってくる。待ちきれず行う慣れない作業にクタクタだ。近年、過疎化と高齢化が進んでいるが、この除雪作業ほど身にしみて温泉街の現実を認識されられることは無い。融雪装置は、道路には付いてない。降り積もった朝、店先や駐車場の除雪をスコップ等手作業に頼り行うのだが雪が残される場所が年々増えている。10年前は、町(行政)の除雪を待つまでもなく密集した温泉街の道路の除雪は住民が自主的に終えていた。今は、とてもその余力がない。空き店舗、高齢者の家の前は、最後まで雪が残っている。観光客の為の歩道の確保もおぼつかない。こんな時は、つくづく温泉街の行く末が心配になる。後継者がいるのは旅館だけだ。数年後には、温泉街は、旅館経営者だけで作っていくことも本気で考えなければならないようだ。行政も新たな雇用の創出には熱心だが元々の温泉街には無関心だ。近年少し改善されたと思う面もあるが観光とそして特に旅館経営者には、甚だ非協力的だ。何事に当たるにも充分な理論武装と周到な準備をしておかないと議会で反発を受けることになる。この理由は、もともと温泉街が町の部分的な土地に集中して発展してきた「持つ者と持たざる者」の経緯、そして我々の配慮に欠けた、ある意味奢った態度に有るのかも知れない。また後継者は、旅館以外には居ないという退廃的な様相その物にあるのかも。去りゆく者の怨念を残る者が背負う・・そんな妄想にも似た考えがふと心を過ぎる。町村合併が迫る中で何とか町として以上に温泉街としてのアイデンティティーを築いておきたいと思う。シンシンと雪の積もる中でその思いが強くなる。明日の除雪車は、どうなるのだろうか?とりあえず今は、それが心配だ。